利用者の希望・状況に合わせて、個別的に支援を計画・提供しています。
指導員、看護師、栄養士等の職員が協力し、法人独自の支援プログラム等を活用することにより、効果的・効率的な支援の提供に努めています。
Case.1 家族とのつながりが断たれていた青年と一緒に探り合った自立への道。
ある更生施設の青年は、発達障がいを抱えていました。社会から、そして家族からも見放されるように入所してきた彼は、自分の能力をうまく見極めることができず、仕事も社会生活もうまくいかない負の連鎖に苦しんでいました。
そんな彼と向き合った職員は、彼の意見を受け止め、「ものごとにはステップがある。まずは一歩ずつ頑張っていこう。」と、毎日毎日、根気強く話し合うことを続けました。
「彼の今後を考えると、ここであきらめてはいけない。」なかなか思いが届かないもどかしさを抱えながらも、職員は決して見放しませんでした。やがて、本気で向き合ってくれる人と出会えた安心から、気持ちが安定した青年は、地元でクリーニングの仕事に就くことができました。仕事を任される喜びを知った青年は、数ヶ月後、ついに地域社会でアパート暮らしを始めました。
彼はアパートに移ったいまも、施設で開催している夏祭りなどのイベントに顔を出しては、元気に仕事を続けていることを嬉しそうに職員に話してくれるそうです。
Case.2 一歩ずつ取り戻した生活習慣と自分を信じるということ。
一日三食の食事を摂る。そんな当たり前に思うことでも、当たり前でない人もいます。ある女性は、規則正しく食事を摂るという習慣を持っていませんでした。時間に関係なく、空腹を感じたら食べる。しかも、きちんとした食事ではなく、お菓子やカップ麺ばかり。その結果、身体に変調をきたし、社会生活を送るのもままならないという状態でした。
女性の自立支援にあたった職員は、本人との面接を通じてその訳を知りました。女性は、親から十分な愛情を受けずに育ち、食事はおろか基本的な生活習慣を身に付けていませんでした。一日三食を食べること、毎日入浴をすること、布団の中で眠ること・・・そうした当たり前のことができずにいたのです。生まれた状況、育った環境下で周囲に翻弄され、自分というかけがえのない存在への愛情と信頼感を持てずにいた女性。職員は、そんな彼女に寄り添いながら、社会の「当たり前」を押し付けることはしませんでした。「人は一人ひとり、育った環境も価値観も違います。その方と信頼関係を築くには、まず相手の立場に立って、相手の考えや意見を聞き、時には育った環境や家族関係にまで入り込んで、その方の生き様とじっくり向き合うことが必要なんです。その上で、課題や問題を一つずつ整理して、その方にとって最良の道を選んでもらうことが大切なのだと思います。」
そんな支援の積み重ねの中で、女性は徐々に生活のリズムを取り戻し、まもなく地域への自立という社会復帰の一歩を踏み出しました。「ここに来てよかった。」女性が笑顔でかけてくれた言葉を、職員はいまでも忘れられないそうです。
Case.3 たとえ失敗しても、取り戻せない人生はない。
アルコール依存症を抱え、過酷な生活を余儀なくされた男性。元調理師というその男性の社会復帰を支援することになったのは、赴任後間もない若い職員でした。親子ほどもある年の差。そして人生経験の違い…。しかし、職員は戸惑う間もなく、男性の社会復帰に向けた支援を始めました。依存症から回復するための相談・支援はもちろん、男性が抱えていた負債の処理のために関係機関を訪ねたり、弁護士に会って相談をしたり。一方で、就労に向けた仕事探しにも共に奔走しました。元調理師ということで、その資格を活かすことも考えましたがアルコールがつきものの調理の職場は、疾病回復の妨げになる。本人とも話し合い、ようやく見つけた清掃の仕事を通じて、男性はついに立ち直るきっかけを掴みました。
自立への歩みの中で、男性は疎遠になっていた兄との再会をすることができました。「たくさん迷惑をかけてしまい、兄からは二度と顔を見せるなと言われていた。でも先日、元気かと声をかけてもらい、とても嬉しかった。頑張ってきて本当に良かった。」満面の笑顔でそう話してくれた男性は、さらに、「迷惑をかけた子供たちにも会って謝りたい。そのために、また一歩一歩、頑張っていきたい。」と新たな決意を語ってくれました。職員は、自分のような新米に自らの思いを打ち明けてくれたことが嬉しくて、「一緒に頑張りましょう。」と手を握り合ったそうです。